R7 5/16 黒潮町の防災ツーリズム視察

第1回「NIPPON防災資産」の優良認定に選ばれている、高知県黒潮町の防災ツーリズムを視察してきました!

黒潮町では、高さ34メートルという日本最大級の津波が想定されており、それに備えたハード対策として「佐賀地区津波避難タワー」が整備されています。この視察では、その避難施設や地域の防災・減災力向上に資するツーリズムの仕組みについて、地区防災組織「防災かかりがま士の会」の案内で、現地の様子を学ばせていただきました。

宇宙船のような津波避難タワー

最初に訪れたのは、佐賀地区の津波避難タワーです。最上階には、雨風をしのげる宇宙船のような避難スペースがあり、内部には一時的に待機するための避難グッズも整備されていました。このツアーの参加費の一部は、こうした設備の維持・整備にも活用されているそうです。

なかでも特に注目したのは、「トイレ環境」です。写真のように個室スペースがあり、災害時にはその中に簡易・携帯トイレを設置して使用する仕組みでした。

災害時のトイレは場所と人に合わせて適切なものを選ぶ

徳島大学環境防災研究センターでも、これまでさまざまな簡易トイレを実際に「座って・触って」比較体験する機会を設けてきました。その中で、災害時に不特定多数の人が使うことを前提とするなら、「洗えて衛生的に保てるもの」「高さと座面のバランスが良いもの」「へたらない耐久性のあるもの」が、快適に使える条件だということがわかっていました。


今回、地域の自主防災会の方から伺ったのが、下の写真にもある「オイル缶を活用した手づくりトイレ」の工夫です。高さも程よく、座面も広くて安定感があり、オイル缶に汚物がいっぱいになった後はフタをして廊下に置いておけば、臭いも封じられ、そのまま破棄できるとのこと。後処理の観点からも、一時避難所のトイレとしては、合理的だと感じました。

実際、令和6年能登半島地震後の避難所運営に携わった方々へのヒアリングでは、高齢者の方が凝固剤や消臭袋の使い方に戸惑い、結果的に汚物を重ねてトイレを済ませていたという話も聞きました。

平時の訓練では問題なく使えても、災害時の慌ただしい状況や狭い個室内では、袋を設置し、用を足し、凝固剤を入れて、袋を縛って、廃棄場所に持っていく……という一連の動作は、高齢者や配慮が必要な方にとっては大きな負担になり得ます。

※参考に,簡易トイレの使い方動画はこちら


その点、オイル缶トイレはこうした手間が軽減され、設置場所や利用者の状況に応じて考えると利便性が高いと感じました。


夜間避難訓練と意見交換

視察の後半では、黒潮町防災ツーリズムの誕生経緯や運用体制について座学で学び、その後、宿泊先のホテルで夜間避難訓練を体験しました。

夜間避難訓練は、宿泊施設(ネスト・ウエストガーデン土佐)が主体となり企画・実施されるもので、夕食中に突然地震が発生し、近くの津波避難タワーに避難するというシナリオです。真っ暗な中で避難すると、タワーの位置はすぐ近くでも、階段の場所が分かりにくく、少し戸惑いました。


訓練後には参加者とホテルスタッフとの意見交換も行われ、ホテル側にとっても今後の防災対策に活かすヒントとなり、参加者にとっても実践的な学びとなる、まさに“WIN-WIN”の訓練プログラムでした。


上記の一連の体験プログラム及び宿泊等のコーディネイトは、黒潮町観光ネットワークさんが全て担ってくださいました!現地視察の意図や要望をくみ取っていただき丁寧にコーディネートしていただいたおかげで、とても満足度の高いトータルツアーでした。


最後に、今回の黒潮町防災ツーリズムの視察を得て感じたことです。


黒潮町防災ツーリズムのように、地域が取り組む実際の防災・減災活動をそのままツアーとして体験できる事例は、全国的にも貴重です。徳島で同様の取り組みを行うには、地域の規模や拠点施設の整備、地元の協力体制、旅行業との連携、コンセプトの磨き上げなど、多くの課題があると感じました。


私たちにできることは四国防災八十八話を題材としたツアーの企画支援で、本件については令和7年度から、一般社団法人イーストとくしま観光推進機構・一般社団法人ツーリズム徳島により「先人の教えに出会う旅 徳島・防災ツーリズムツアー」がスタートしています!

このツアーでは、過去に繰り返されてきた水害の痕跡や地震の教訓を記す場所をめぐりながら、徳島の風土や文化も見つめ直す体験型プログラムで、日常の中にある「気づき」を通じて、防災意識を高めることを目的としています。

実際の防災施設や訓練を体験するツアーとは異なりますが、「災害を忘れない」「郷土を知り、備える」という視点から、徳島らしい防災・減災の学びが詰まっています。

ぜひ、徳島にお越しの際は、こちらのツアーもご検討いただき、先人たちの知恵と徳島の魅力に触れてみてください!

四国防災八十八話倶楽部

本サイトは「先人の教えに学ぶ 四国防災八十八話」の中に記載されている様々な教訓や,それらに関係する情報を紹介するサイトです.四国防災八十八話・普及啓発研究会が運営しています.

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