【コラム1】お寺の立地は洪水の危険性を知らせるハザードマップ?!
吉野川周辺では昔から度々洪水が起こっています.そのたびに先人たちは様々な知恵と工夫を施し,洪水に対処し,それを教訓に備えをしてきました.
今回は,四国八十八箇所霊場をテーマに吉野川の洪水への備えを,香川大学の客員教授である松尾先生の学位論文である「四国の水害史料や伝承を活用した防災啓発手法の開発に関する研究」を基にお話ししたいと思います.
四国八十八箇所霊場は吉野川に十分な堤防がなかった時代に造られたものです.
江戸時代になると,土をかき寄せて作った堤防が各地にできています.
例えば,四国防災八十八話マップの第6話にもでてくるのですが,1756年(宝暦6年)の大洪水被害を契機に、庄屋である稲垣監物が藩の許可を得ずに、鴨島町牛島付近に一夜にして築いたと伝えられる監物堤などがあります.
しかし,これらはごく限られた地域を守るための堤防で,堤防の高さも低く,大洪水のたびに堤防は破壊されていました.
四国八十八箇所霊場の一番札所の霊山寺から17番札所の井戸寺までの札所は,吉野川沖積平野の外縁部に位置します.この位置関係に興味を持たれた松尾先生は,お寺と吉野川氾濫水位との関係を調べるために,吉野川流域の氾濫原やその境界地にある7か所のお寺について現地調査をされました.その結果,17番札所の井戸寺を除くすべての札所が吉野川による浸水を回避できる高さに作られていましたことが明らかとなりました.
また,井戸寺も洪水の浸水区域にあるのですが,標高図をみると,周辺の田畑地域よりも1mほど高い微高地になっていることがわかります.
実際に,先日私も井戸寺に行って現場を確認したところ,すべての建物が高石垣づくりであり,浸水被害をできるだけ小さくする建築様式になっていました.
また,お寺の方にお話しを伺ったところ,平成16年の台風23号の時,周辺の田畑や道路は車で通れないほど浸水してしまい,寺の敷地内にも水がきていたそうです.しかし,その水は微高地になる坂の手前でとまり,建物自体が浸水することはなかったそうです.
このように,四国八十八箇所霊場の一番札所から16番札所までは吉野川の洪水による浸水想定区域の外側に建立されており,また浸水域にある17番札所の井戸寺も,周辺地域より少し高い場所に,かつ高石垣づくりで建立されています.
こうした目で徳島平野の霊場が建立された場所とその建築様式を見ることで,周辺地域の洪水の危険性を実感することができます.まさにリアルハザードマップといえます.
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